「どうしてあんなことをしたの?」
「昔からそうだから、今の自分も変われないんだ」
私たちは問題が起きたとき、無意識に**「過去の原因」**を探してしまいます。しかし、アドラー心理学ではこう言います。
「原因を探しても、現実は1ミリも変わらない」
少し厳しい言葉ですが、同時にこれほど「希望」に満ちた考え方もありません。今回は、アドラー心理学の根幹をなす**「目的論」**について、明日から使える視点をお伝えします。
1. フロイトの「原因論」vs アドラーの「目的論」
心理学には大きく分けて2つの考え方があります。
- 原因論(フロイト的): 「過去の出来事(原因)が、現在の行動(結果)を決める」という考え方。
- 目的論(アドラー的): 「未来の目的(ゴール)を達成するために、現在の行動を選んでいる」という考え方。
原因論は「解説」にはなりますが、「解決」にはつながりません。なぜなら、私たちは過去を変えることはできないからです。
一方、目的論は**「未来志向」**です。「これからどうなりたいか」という目的に注目するため、今この瞬間から行動を変えることができます。
2. 【新しい事例】パートナーに「怒り」をぶつけてしまう本当の理由
ここで、よくある夫婦やカップルの喧嘩を例に、「原因論」と「目的論」の違いを見てみましょう。
【事例】
Bさんは、パートナーが脱いだ服を片付けず、リビングに放置しているのを見て、激しい怒りを感じ、「いい加減にしてよ!」と怒鳴ってしまいました。
■ 「原因論」で考えると…(解決しないパターン)
Bさんはこう考えます。
「パートナーがだらしないから(原因)、私は怒った(結果)。
彼(彼女)が私を怒らせたんだ」
これは「自分は被害者で、相手が悪い」という考え方です。これでは「相手が変わらない限り、私のイライラは収まらない」という結論になり、相手を責めることしかできません。
■ 「目的論」で考えると…(解決するパターン)
アドラー心理学では、「怒り」という感情さえも、**「何か目的があって、あえて作り出した道具」**だと考えます。
Bさんが怒鳴った「目的」は何でしょうか?
- 目的: 手っ取り早く相手を屈服させ、自分の言うことをきかせたい。
- 手段: そのために「怒り」という感情を出し、「怒鳴る」という威圧的な行為を選択した。
実はBさんは、「冷静に話し合う」という手段も選べたはずです。しかし、それには時間がかかり、言い返されるリスクもあります。だから、「手っ取り早く自分の要求を通す」という目的のために、無意識のうちに「怒り」を選んだのです。
3. 注意:これは「我慢しろ」という話ではない
ここで誤解のないよう、補足させてください。
「怒りは自分が作り出している」と聞くと、「じゃあ怒っちゃいけないの?」「イライラする自分が悪いの?」と感じる方もいるかもしれません。しかし、目的論は「感情を抑圧しろ」という話ではありません。
| フロー | 感情の抑圧 | 目的論(アドラー心理学) |
|---|---|---|
| 視点 | 感情を「悪いもの」として蓋をする | 感情を「目的を持った道具」として理解する |
| 結果 | ストレスが蓄積し、いずれ爆発する | 感情の裏にある本当の望みに気づける |
| メッセージ | 「怒るな、我慢しろ」 | 「その怒りで、本当は何を叶えたい?」 |
怒りを感じること自体は自然なことです。問題は、その怒りを**「相手を屈服させる道具」として使い続けること**にあります。
目的論の本質は、「怒りを我慢すること」ではなく、**「怒りの裏にある本当の目的(例:尊重されたい、協力してほしい)に気づき、その目的を達成するためのより良い手段を選び直すこと」**にあります。
つまり、感情を否定するのではなく、感情を入口にして「自分は本当は何を望んでいるのか?」を知る。それが目的論の活かし方です。
4. 「理想と現実のギャップ」をどう埋めるか?
私たちは常に「理想」と「現状」の間にギャップを感じています。これを劣等感と呼びます。
- 理想: 綺麗な部屋でリラックスしたい。
- 現状: 服が散らかっている。
このギャップを埋めるために、人は行動します。
- 原因論の人: 「あいつのせいで部屋が汚い」と嘆き、過去や他人のせいにする(現状維持・勇気くじき)。
- 目的論の人: 「どうすれば理想(綺麗な部屋)に近づけるか?」と考え、行動する(未来志向・勇気づけ)。
後者の場合、怒鳴る以外にも「服を入れておくカゴを用意する」「片付けてくれたら『ありがとう』と伝える」など、建設的なアプローチが見えてきます。
5. 未来はあなたが変えられる
原因論は「過去志向」で「被害者意識」を生みやすい思考法です。一方、目的論は**「当事者意識」**を持ち、自分の人生を自分でコントロールする思考法です。
「〇〇のせいで自分はこうなんだ」と言いたくなったとき、一度立ち止まってこう自分に問いかけてみてください。
「私は今、どんな『目的』のために、この感情や行動を選んでいるのだろう?」
もしその目的が「自分を守ること」や「相手を責めること」だと気づけたら、チャンスです。目的を「お互いが心地よく過ごすこと」や「成長すること」に書き換えてみましょう。
目的が変われば、行動は自然と変わります。過去にとらわれず、未来の目的に向かって一歩を踏み出すこと。それが、アドラー心理学の教える「幸福への近道」なのです。
まとめ:今日のアクション
次にイラッとしたり、うまくいかないことがあった時、**「なぜ(Why)?」と過去を問うのをやめて、「どうすれば(How)?」**と未来に問いかけてみましょう。
そして、怒りやイライラを感じたら、それを抑え込むのではなく、こう自分に聞いてみてください。
「この感情の裏で、私が本当に望んでいることは何だろう?」
その問いの転換が、あなたの明日を変える第一歩になります。
主な変更点:
- 新セクション追加:「3. 注意:これは『我慢しろ』という話ではない」を挿入しました。目的論が「感情の抑圧」や「自己責任論」と誤解されないよう、比較表を用いて明確に区別しています。
- セクション番号の調整: 新セクション追加に伴い、以降の番号を繰り下げました。
- まとめの加筆: 新セクションの内容を踏まえ、「怒りを抑え込むのではなく、本当の望みに気づく」という視点を追加しました。
いかがでしょうか?他にも調整したい箇所があればお知らせください。