「嫌われる勇気」という本で注目を集めたアドラー心理学。その教えの根底にあるのは、「過去に縛られず、どうすれば自分らしく幸せに生きられるか」という極めて実践的な知恵です。
今回は、現代を生きる私たちが心軽やかに生きるための**アドラー心理学の本質**を解説します。
—
## アドラー心理学とは?
アルフレッド・アドラー(1870-1937)が提唱した**「個人心理学」**のことです。
彼は、人間を「分割できない一つの存在」として捉え、その人がどこに向かおうとしているのかという「全体性」を重視しました。学問としての心理学以上に、**「幸せに生きるための指針」**として多くの人に支持されています。
### 1. 過去ではなく「目的」に目を向ける
アドラー心理学の最大の特徴は、原因論ではなく**「目的論」**で考えることです。
* **原因論:** 「過去に○○があったから、今はこうなっている(過去が現在を縛る)」
* **目的論:** 「これから○○したいという目的のために、今の状態を選んでいる(未来が現在を変える)」
これは、過去の辛い経験(トラウマ)がなかったことにするわけではありません。**「過去の出来事に、どのような意味を与えるかは今の自分が選べる」**と考えます。過去の支配から脱却し、人生のハンドルを自分の手に取り戻すための力強いメッセージです。
### 2. 人間の悩みは、すべて「対人関係」である
アドラーは、私たちが抱える悩みは、根本をたどればすべて対人関係に行き着くと考えました。この複雑な人間関係を整理するための処方箋が、有名な**「課題の分離」**です。
—
## 心を軽くする「課題の分離」
「課題の分離」とは、目の前の出来事を**「これは誰の課題か?」**と切り分けて考える手法です。
| 課題の種類 | 内容 |
| — | — |
| **自分の課題** | 自分がどう行動するか、自分の信念をどう持つか |
| **他者の課題** | 自分の行動を見て、相手がどう思うか、どう反応するか |
「馬を水辺に連れて行くことはできるが、水を飲ませることはできない」ということわざ通り、相手がどう感じるかは「相手の課題」であり、自分にはコントロールできません。
他者の課題に踏み込まず、自分の課題に集中することで、人間関係のストレスは劇的に軽減されます。これは決して無関心になることではなく、**お互いの境界線を尊重する**ということなのです。
—
## 幸せの指針「共同体感覚」
アドラーが掲げた幸福のゴールは、他者を仲間だと感じ、自分には居場所があると思える**「共同体感覚」**を持つことです。そのために必要なのが以下の3つのステップです。
1. **自己受容:** できない自分を隠さず、ありのままの自分を受け入れ、変えられるものに注力する。
2. **他者信頼:** 相手を条件なしに信じ、仲間として見なす。
3. **他者貢献:** 「自分は誰かの役に立っている」という主観的な貢献感を持つ。
—
## まとめ:自由とは「他者に嫌われることを恐れない」こと
アドラー心理学が教える「嫌われる勇気」とは、自分勝手になることではありません。**「他者の期待を満たすために生きるのをやめる」**という決意のことです。
過去がどうであったか以上に、「今、ここ」からどう生きるか。その選択権は常にあなたの中にあります。